紅魔館×少女革命ウテナ×サルトル『嘔吐』 レ ギ オ ン の 肖 像 A5版ハードカバー上製本 240頁 1500円 R18Gの為、18歳未満の方及び性的描写が残酷な表現に生理的嫌悪を抱く方の閲覧はご遠慮願います。 12月30日 C85 スペース 東ホールパ-07a「Alya」にて頒布予定 <あらすじ> ■緋劇:其れは観測された人形劇 廃墟となった屋敷。 「少女の不在証明につき閉館」 少女達は選択を行う。 金色の百合、銀の薔薇。 導く先にある惨劇は。 犬に犯される吸血鬼の妹。多数の蟲。 「シャンパンの箱を指差して、詩人は言った。 其れは私の娘だと」 けれど、観測は行われる。 其れが故に物語は変質する。 「咲夜だよ。いつもだったら、あいつの役目だろ、これは」 美鈴を見上げながら、そう呟くと、館の主はきょとんとした顔をしていた。 「何を言っている? 咲夜なら居るじゃない」 「は? 何処にだ?」 「其処に」 指差したのは、魔理沙の手元に置かれた皿だった。 「は?」 「だから、其処に居るじゃない咲夜は。貴方が今食べたのは、咲夜の肺で作ったガーリックバター炒めよ」 一瞬、何を言われているのかが、理解出来なかった。 「貴方が最初に食べたのは、咲夜で取ったフォンで作ったスープよ。腸詰は、何だったかしら?」 「ああ、其れは咲夜さんの小腸と脳髄で作った腸詰の燻製です」 ■棄劇:其れは分岐された人形劇 詩人は詠っていた。君、常に酔っていたまえと。 例え其れが満ち注がれた葡萄酒であろうと。 吸い終わって成れ果てになった阿片であろうと。 吐き気をもよおす程の美徳でも。 身が痙攣する程の背徳でも。 其れが何であろうと、其れがどれであろうと。 人は常に酔っていなければならないと。 「ねぇ、パチェ」 悪魔が、毒を含んだ甘い声で囁く。 「そろそろ咲夜が死ぬわ」 低く枯れた声で、そうとだけ。 「またなのね」 魔女は頁を一つ、また捲る。 其処には、やはり無音だけ。 「いいえ、未だなのよ。パチェ。 此の芝居は既に終わり続ける。 そして、此の芝居は常に始まり続ける。 何も終わらない、だから、何も始まらない。 此の間違いだらけの恋文は、其れでも永遠に続き続ける。 だから、終わらなければならない。 其れが、貴女と私の約束なのだから」 「いいえ、貴女と私との約束よ」 「パチェ、此の退屈な喜劇を、此の怠惰な悲劇を、子供がむずがるばかりの物語を」 そっと、魔女の頬を悪魔が撫でる。 「また死ぬのね」 「未だ死ぬのよ」 詩人は詠っていた。 流れる風が、飛ぶ鳥が、そよぐ樹が、抜ける空が、きっと君に告げるだろう。 ――酔いたまえ。今は酔いたまえと。 ■禍劇:其れは分岐された人形芝居 詩人は嘗て、ある種の黴が自らの皮膚を食い荒らす、其の痛みを阿片の酩酊に溶かしながら、こう歌っていた。 僕は、黴について考える。 黴達もまた、僕について考えているだろう。 僕の顔の半分を覆う、彼ら。 胎動の度に、僕の精神は引き裂かれていく。僕の血がインクに変わってしまっている。何に於いても、避けるべき事だった。 其の時に、詩人は思う。 僕達は神について考える。 神も僕達について考える。 けれど、神は決して、僕達の為に何かを考える事は無いのだろう。 「全ては、私達が観測されたから」 魔女は上を見る。 魔法使いも、上を見上げて。 君を認識した。 「観測断面。 幾つもの観測が私達を描き続ける。 他人という地獄の中で、私達の運命を地獄の糸巻き車に巻き付け続けている。 だから、私達は、この人形劇の中で、壊れた芝居を続けるのよ」 「ねぇ、魔理沙。貴女なら、其れを変える事が出来る。其れこそが、呪いだから」 「貴女こそが聖アントニウスの火、其の物だから」 ■翅劇:其れは、少女達の不在証明 紅魔館の地下。 其処にあったのは一脚の椅子。 一脚のソファー。 壁という壁は格子模様が刻まれていた。 矩形の穴。 其の中に詰まっているのは、柩。 無数の柩が其処にあった。 八雲紫は椅子に腰掛けて、肘掛に頬杖を付きながら、彼女を見つめる。 ソファーに座っているのは、二人の少女。 二人、けれど、革のコルセットで締められているのは、一つの胴体。 少女達は、一つの体で繋がっていた。 「ごきげんよう、レギオン」 「今も私達は陳列されている。 硝子の柩の中で、死を繰り返す。 『それがあるところのものであり、あらぬところのものであらぬもの』であり続ける」 「私達は其の中で透明になっていく」 「誰も、私達を見たりしない」 「誰も、私達自身を愛してなんかくれない」 「だから、壊すの」 「復讐するの」 「卵の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでしまう。 私達は雛だ、卵は世界だ、世界の殻を破らねば、私達は生まれず死んでいく。 他人という地獄の中で」 紅い霧が魔理沙の周りを取り囲む。 「世界の殻を破壊する、そして、本当の私で居続ける為に! 其れは、お前も一緒だ、霊夢!」 「何ですって?」 ごぉんと柱時計が鳴いた。 「お前さえも、死に続けている! この壊れた人形劇ではな! 陳列され、インクによって刻まれ続ける! 此処に居る限り、永劫に、永遠に! 私は救う! 此の世界を革命するんだ!」 茨が、柱時計を覆い始め。 「さぁ逃げよう、霊夢。此の世界は壊れたコミケだから!」