救済心理ジュブナイルホラー 脳 人 間 と サ ァ カ ス カ ル ト 文庫版 200頁 700円 8月12日 C84 スペース 東ホールF-34b「ゐた・せくすありす」にて頒布予定 <あらすじ> YOU WILL SEE SUCH PRETTY THINGS 私達は宇宙人に狙われています。 宇宙人の侵略は地球人の精神を破壊する事で完成されます。 終末の日は近づいています。 WHAT DO YOU HATE? 宇宙人はエンキュリスを地球の地下へと向けて設置しました。 エキュリスは兎の容をしています。 其の長い耳に似た触角を振動させる事で人間の脳波を操作します。 YOU ARE ILL 其れは自殺電波と呼ばれています。 自殺電波はメサイア・ノイズという形で顕現します。 私達はメサイア・ノイズによって、認識を破壊されます。 WE JUST WANT YOU TO FIX YOU 人が幸福である為には、周囲の環境を認識しないといけません。 認識を破壊するのです。認識する波長を操作してしまうのです。 其の中で、私達は、ただ立っている事さえも忘れてしまうのです。 WE HAVE ALREDY SEEN IT 言葉が失われます。 ポールシフトが発生するのです。 理性のポールシフトによって、日常のカタストロフが発生するのです。 YOU CAN LOSE EVERYTHING 廃墟になった教会。 何処にあるのかは分からない。 けれど、朽ち落ちた聖人の像と埃と蜘蛛の巣が絡まった椅子が散らばる場景。 壁画は既に仔細を失って、元の姿を留めない。 細く、何かの音が流れていた。 NOTHING IS PRICELESS 緩慢に流れ続ける一つパイプオルガンが歌う音。 ざりとノイズが混じりながらも、映し出されたモノクロの映像。 時間の流れで緩やかに死んだ教会、其の床の上。 其処には、無数のテレビが落ちていた。 ブラウン管。 YOU CANNOT HIDE FOREVER 廃教会の中、映像の中心に一人の女が立っていた。 女、なのだと思う。 喪服にも似た黒いワンピース。 胸に白い薔薇のコサージュ。 恐らくは、女なのだろう。 其の判別をつけるべき顔には、光沢を持った兎のマスクをしていたから。 WE STAND AT THE DOOR 女の抱えている物。 映像の大半を埋め尽くしている物と同じ、ブラウン管のテレビを胸元に持っていた。 ざりと女の抱えるテレビの画面にも同じくノイズが混じる。 映し出された物。 兎の顔のピクトグラム。 YOU ARE LOST ON THE PATH 隣の車両へと続く境界。 そこに、一つの人影が立っていた。 肩口が広がった紫色のワンピース。 縁には白いレースが彩られていた。 セルロイドの人形の様な肌。 少女人形の様なニーソックス。 光沢を帯びた黒い革靴。 肘まで伸びた白い手袋。 少女趣味、と云えば良いのだろうか。 そんな服を着た、女。 けれど、一つだけ、違和感だけがある。 首。 本来、其処にあるべき顔は無く。 代わりに赤黒く、滑った肉の塊が首より先に。 脳。 THERE IS TRUTH IN FICTION 「こんばんは、マエルベリー・ハーンさん」 塞いでいる筈の耳へと、甘たるい声が響いてくる。 見上げると、滑った肉塊が僅かに膨らんでは縮みを繰り返しているのに気づく。 呼吸をする様に。 ぺちゃりと汁がメリーの足元へと落ちる。 「私は貴方の脳です」 ALL GOOD THINGS こんなまがい物ばかりの世の中だ。 幸せだけが、救済だけが、純粋などある訳ないじゃない? 少しばかり、脳を壊して。 少しばかり、悪者を用意して。 少しばかり、優しくすれば。 人間なんて、簡単に救われる。 そんなものでしょう? そう言って、がららかららと、少女は笑った。